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 グローバル競争時代の就活活動

インターハイスクール学院長 渡辺克彦

東京品川にあるアメリカン・ハイスクール日本校の「インターハイスクール」 の学院長をしています。ホームページから、当校の生徒が自分の目標に向けて活動している様子をご覧になれます。貴方はアメリカン・ハイスクールの学院長が「なぜ、就活道場?」をと疑問を持たれるかもしれません。当校ではインターネットを利用した国際的な学習システムと共にアメリカで開発されたコーチングメソッドを採用して、学生ひとり一人のキャリア・デベロップメントをサポートする学習コーチ制度を導入しています。この学習コーチのコンセプトとメソッドに、現在貴方が進めている就職活動に大きなヒントがあると確信して「就活道場」を開場しました。

 アメリカン・ハイスクールなので、日本とアメリカを比べて大学生の就職活動の在り方を以下に述べてみました。

野球 vs.ベースボール

 アメリカの友人に日本の高校野球について説明した際、その友人から「なぜ甲子園大会は「一本勝負」のトーナメント形式で、敗者復活システムを採用しないのか?」と聞かれました。彼は「ベースボールは運が左右するので、リーグ戦(シーズン予選で多数試合をして)の勝ち負けを通しチームの実力と若い選手の個性を測り、それらをさらに伸ばすことができること、そして目先の勝負にこだわらずに選手全員に必ずチャンスを与えることが重要なのだ」と意見しました。私が「リーグ戦を導入したら、多大なコスト負担がある」と反論したら、彼は「運営を学校と先生だけに任せるのでなく、選手たちの家族や地域のボランティアがサポートすればよい」と説明してくれました。アメリカでは多くの大人たちが学生をサポートする目的で、試合を平日ナイターや週末に開催します。私は気付きました、だからアメリカでは「野球場」のことを「ボールパーク(公園)」と呼ぶ社会風土があるのだと。

ポイント:

敗者復活システム

必ずチャンスを与える

多くの大人たちが学生をサポートする

 

受験勉強 vs.AO入試対策

 もっと身近なところで貴方も経験した大学受験についてお話します。約10年前慶応大学が日本で初めて採用した「AO入試制度」はご存じと思います。実は米国の大学入試は「AO入試制度」だけで、学力テストは英語と数学の2教科を測るSATという全米共通テストだけです(定期的に複数回受験可)。日本のように一本勝負の入試はありません。ハイスクールに進むと、専門キャリアカンセラー(学習コーチ)が学生の進路をサポートします。成績の改善、願書の書き方、面接指導、推薦状の取り付け等々、学生たちはカンセラー(学習コーチ)と共に約18ヶ月かけて志望大学進学のためのポートフォリオ(自己推薦プロファイル)をAO入試の為に制作します。そうです、アメリカの高校生は志望大学を目指すために、日本の大学生の就職活動と同じことを専門カンセラー(学習コーチ)と一緒に1年以上かけて行います。15~17歳の時期に高校生たちは、自分の資質を見つけ出し、当面の目標を明確にする為の「自分探し」の体験を専門家と一緒にします

 ポイント:

専門カンセラー(学習コーチ)が学生の進路をサポートします

「自分探し」の体験を専門家と一緒にします

 

日系企業は人事部による面接 vs.外資系企業は会社による面接

 就職活動をされている貴方は面接官に好印象をもってもらえる印象(ハウツー)を身につけようと努力しています。その努力が効果的なのか、日米企業の採用プロセスを比較して述べたいと思います。

 アメリカでは新卒採用や就活シーズンなど日本特有の雇用慣行はありません。前項でふれた高校からの「AO大学入試」の延長上で、学生は大学に入ると「専攻分野の学習を通して自分探し」を続けながら企業インターンシップ制度などを利用して就職活動を行います。米企業の採用は日系企業のように人事部主導ではなく、各部門が直接学生と面接をして採用します。採用候補者は半日かけて多くの社員と面接し、複眼的な評価を受けることになります。また現場の社員が面接官なので様々な面接手法が自由に実施され、面接者はそれら全てに対応しなければなりません。在日外資系企業も同様な採用面接を導入しているところは少なくありません。最近は日系企業でも人事部担当者以外に社外専門家(人事コンサルタント等)を面接会場に同席させ、複眼的に面接者を評価するケースが増えています。

 何故いま日本でも複眼で多様な面接評価が必要なのでしょうか。貴方の周りを見てください。完璧なエントリーシートを作り、礼儀作法を習い、想定問答で準備をし、リクルートスーツを着込んだ学生たちが就職活動を進めています。人事部は採用候補の個性や違いが見えない中、複眼で多様な評価手法を導入して「本当に欲しい人材を見分ける」努力をしています。今後日本の新卒就職事情がアメリカのように「買い手市場」に成熟していくことは必至です。また外国人の採用も加速して競争は益々激化します。

 ポイント:

複眼で多様な面接評価

採用候補者の個性や違いが見えない

 

就職活動で本当に必要なもの、

 残念ながら日本には、ベースボール精神にみられる「リスクテイク」と「フェアチャンス」に大人の理解と積極的なサポートがありません。また専門家による進路カウンセリング(コーチング)を通した、学生自身による「自分探し」の体験機会もありません。そして急速な国際化と多様化が進む日本社会の中で、就活生は自分一人で自己実現のステップを見つけ出さなくてはなりません。

 「企画力」「実行力」「チャレンジ精神」...いずれも大事です。しかし就活を通して最も必要なことは「自分自身を探し出すこと」です。就活中の限られた時間内で何をすれば良いのでしょうか。答えは簡単です。アメリカに比べ日本の大学生に決定的に足りないものは「コミュニケーションと自己表現能力」です。企業が採用候補に求めているこの能力を短期間で高める為には多くの自己表現をする機会を得ることと、専門家によるカウンセリング(コーチング)が必須です。これは面接ハウツー(手法)とは違います。

 就職活動は戦いです。特に採用面接は面接官と貴方の真剣勝負です。戦いに挑む前、戦士は他流試合で腕を磨いてから真剣試合に臨むのは世の常です。就活道場で多くの他流試合(ロールプレーで模擬面接)を体験することで度胸が付き、質問の受け答えがうまくなり、流暢な応答で面接官に好印象を与えることができるでしょう。しかし、これだけでは表面的なハウツー(手法)で見透かされてしまいます。多くの他流試合の結果を道場師範の就活コーチと一緒に見直すことで「自分発見」につながり、採用者に対して「本当に欲しい人材は自分である」と自信をもって言い切れる人間になれます。

 自分はいったいどのような人間で、どんなことに喜びや悲しみを感じ、そしてどのようなキャリアを歩みたいのか、就活道場に入門して道場師範の就活コーチと一緒に答えを引き出してもらいたいと願っています。